高齢者向けに新設が検討されている「プラチナNISA」。
「毎月分配金がもらえる」「年金の足しになる」と聞くと魅力的に思えるかもしれません。
しかし実態を知ると、元本割れや高額手数料といった見逃せないリスクが潜んでいます。
この記事では、「プラチナNISA」の仕組みと「通常のNISA」との違い、注意点、そしてもっと堅実な代替案まで詳しく解説します。
安心して老後を迎えるために、本当に必要な投資の考え方を身につけましょう。
高齢者にも投資を促す新制度「プラチナNISA」が話題
高齢者向けNISA創設を検討 「毎月分配型」も想定 金融庁(毎日新聞)
毎月分配型の投資信託が非課税対象になるなど、見た目には魅力的に見える制度。しかし、私はこの制度を定年退職された方や高齢者におすすめしません。
なぜなら、元本割れのリスクが高く、資産を守るべき年代にとって適切とは言えないからです。
この記事では、プラチナNISAと通常のNISAの違いや、制度のメリットに見える点の裏にあるリスクについて解説し、堅実な代替案も紹介します。
プラチナNISAと通常のNISAの違い
項目 | プラチナNISA | 新NISA(成長投資枠・つみたて投資枠) |
---|---|---|
対象年齢 | 65歳以上 | 年齢制限なし |
投資対象 | 毎月分配型の投資信託 | 手数料の低い長期運用向け商品 |
分配金 | 毎月分配 | 基本は再投資(商品による) |
非課税の目的 | 安定収入(生活費補填) | 長期資産形成 |
見た目には「毎月お金が入る=安心」と感じやすいですが、ここに落とし穴があります。
なぜプラチナNISAがよく見えるのか?
高齢者にとって、次のような理由からプラチナNISAは魅力的に映ります。
- 年金の足しになる毎月の分配金がもらえる
- 銀行預金より増えそうな期待感
- 「非課税だからお得」という印象
ですが、これらの魅力は表面上の話。実態を理解してから判断することが大切です。
実際は元本を取り崩している“タコ足配当”
毎月もらえる分配金の中には「特別分配金」と呼ばれる、元本を削って支払われる部分が多く含まれます。
これは運用益ではないため、資産形成ではなく資産の取り崩しです。
→ 特別分配金とは?詳しい解説はこちら
タコが自分の足を食べるような行為ということで、「タコ足配当」とも呼ばれます。
→ タコ足配当とは?詳しい解説はこちら
問題点
- 資産が確実に目減りする
- 高齢者は取り返す時間がない
- 実質的に損をしていることに気づきにくい
手数料が高すぎる!?
毎月分配型の投資信託は、信託報酬(運用手数料)が高額なものが多いです。
→ 信託報酬の基本を知る
年間1.5%〜2.0%程度の信託報酬がかかる商品も珍しくありません。運用益が出たとしても、手数料に吸い取られてしまう可能性もあります。
長期投資では、この「コストの差」が資産の差となって表れます。
ただし定年後の取り崩し自体は悪くない
誤解してはいけないのは、「資産を取り崩すこと=悪」ではないということです。
定年後は働いて収入を得るのが難しいため、資産の取り崩しは生活を維持するための重要な戦略です。
ただし、効率の悪い形で取り崩すのが問題なのです。
賢い代替案:低コストのインデックスファンド+定率取り崩し(4%ルール)
プラチナNISAの代わりにおすすめなのが、通常のNISA(特に成長投資枠)で、低コストのインデックスファンドに投資し、定率で資産を取り崩していく方法です。
→ 4%ルールって何?詳細はこちら
→ インデックスファンドとは?詳細はこちら
4%ルールとは?
- 年間4%ずつ資産を取り崩していく方法
- 長期的に資産を枯渇させにくいと言われる
- 市場の値動きに合わせて柔軟に調整可能
この方法なら、
- 元本を減らすスピードを抑えられる
- 手数料も安く済む
- 資産形成と生活費補填のバランスが取れる
まさに守りながら攻める投資スタイルです。
まとめ
プラチナNISAは一見すると「高齢者向けのやさしい投資制度」に見えるかもしれませんが、 その実態は資産を目減りさせかねないリスク商品でもあります。
投資は“攻め”ではなく“守り”の道具。
年齢やライフステージに合った運用方針を持ち、焦らず堅実に老後の資産を守っていきましょう。
そして、どうせ取り崩すなら、低コスト・高効率な仕組みで。賢い判断が、未来の安心につながります。